栗の丸太で実験したのはそういう理由によるのだが、さて肝心のこと、軟らかい石器で硬い木を相手にどんな実験をしたのか。掘る実験である。磨製石器で立木を伐り倒すことのできるのは分かっているが、そうして得た丸太材に穴を開けることははたして可能なのか。もし可能なら、柱の上に梁を架け渡す時、梁の下辺にホゾ穴を開け、柱の頭部のホゾを差し込んで接合する工法が可能になるし、高床式の倉の床を作る時、太い柱に穴を開け、細めの梁を通すこともできる。
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貫という水平力(地震や大風による横力)に耐える工夫も可能になる。ようするに、今日の日本の木造技法の基本が縄文時代に発している可能性が出てくるのである。さて、学生たちを縄文人として使った実験によると、磨製石器によって穴を開けることはできた。私が一番気にしていたのは時間で、はたしてどのくらいのスピードで掘れたのか。あまり時間がかかると実用性は減ずる。この点を尋ねると、「鉄の斧の四倍」実験の妥当性を示すうれしい答えだ。欧米の実験考古学やニューギェア奥地の先住民の場合と一致するし、四倍であれば十分に実用性はある。私の夢は、こうして着実に現実性を帯びてきたが、その時まで体が大丈夫かどうか。なんせ、学術的関心というより、自分で石の斧を振るって家を造りたいのだから、体力勝負になるのである。